ハヤブサの話

ココでは何度か取り上げたので知っている方も多いと思いますが、
ハヤブサのまとめです。


ハヤブサって知ってますか?
イオンジェット推進と言う特殊なエンジンを使っての長時間制御飛行や、
(月以外の天体では)NASAすら成し得ていない、小惑星への接触後再発進*1など、
数々の日本初どころか、世界初の技術を実証するための技術試験衛星*2がそれです。


飛行中予期せぬ太陽フレアによる、強烈な太陽風を浴びて、ダメージを食らい、
またフライホイールと言う、姿勢制御に重要な部品が、3つの内2つも壊れました。*3


しかし、イオンエンジンなどは順調で一路、小惑星イトカワ


見事に進路や速度を揃えるランデブーに成功し、
88万人の署名を刻んだターゲットマーカーを打ち込み、
次の観測装置ミネルバは上手く着地出来ず、イトカワ表面から離れたものの、


ハヤブサ本体は、着陸しました。


が、
採取装置だけ接触のハズが、予定外にも本体まで完全に降着してしまい、ダメージを増やしてしまいました。


確実を期して、再チャレンジ!
みんなの気持ち(署名)に導かれる様にタッチアンドゴーに成功した。


しかし
ダメージを受けて満身創痍になっていたハヤブサは、
突如として大きく姿勢を乱し、
通信が途切れ行方不明になっていました。


半ば絶望的な中、再発見されて、
ダメージ確認と残った部品(こう言う書き方する程のダメージだった)のケアを通し、
裏ワザ的な運用を駆使して、
普通からは想像もつかない程の知恵と工夫で、
姿勢制御を取り戻しました。


なんとか地球に帰りつく方法が考え出されて、
予定を変更して2010年の到着に向けて、準備を重ねてきました。


そして
一番心配されていたバッテリー*4からの電力によるカプセルの封印を済ませ、
帰還へ向けてのイオンエンジン再点火のタイミングを待っていましたが、
先日衝撃的な記事が朝日新聞*5に掲載されました、


月と地球の距離位に近付いた段階で、
イトカワの地表サンプルが入ってる(可能性がある)カプセルを投下して、
ハヤブサ本体は太陽を回る「人工惑星」として記念碑的に飛び続ける予定*6でしたが、


本来の姿勢制御装置の大半を失い、飛行中の微調整が利かなくなっているので、
オーストラリアの砂漠に設定している*7カプセルの落下位置がブレる危険性があり、
最悪で都市に落ちたら大変な事になる。
そこで、ギリギリまで投下を遅らせて地球に近付く事になり、
その結果ハヤブサは、
離脱のタイミングを失い大気圏突入してしまい流れ星として燃え尽きる。
と言うのです。




ある意味日本の技術力とそれを支える人間力を見せ付け、
あの(映画にもなった)アポロ13号とも比較される程に話題を提供してくれた

あのハヤブサが、
まるで身を捨てて卵を守る親鳥の様に燃え尽きるなんて…


もう、正直言って泣きました。
あまりにも演出めいた劇的な最期です。
その時に向けて静かに待ちましょう。


参考
http://hayabusamatome.xrea.jp/wiki/
初心者の方にはこの中の創作系のページにあるFlashを順番にみたらイメージしやすいでしょう。
http://hayabusamatome.xrea.jp/wiki/index.php?%C1%CF%BA%EE%B7%CF
はやぶさ、帰って来い…」なんかは、
本当にさだまさしさんに替え歌歌いなおして欲しくなりますよ。




ただし、世の中は「みんな応援してくれる」ほど甘くは無いようで、


財務省
「トラブル多発しスマートに成功しなかったから失敗作だった」
と、
NASAと競争になってる2号機の製作に懐疑的だし、


一部のマスコミからは、
「カプセルから試料が採れれば成功」=「試料が回収出来なければ意味なし」
と、
イチゼロ的な評価も聞こえている。


「技術試験」衛星なのだから、加点法で成功した技術を数えて
多数のトラブルを乗り切った実績こそを誉めるべきで、
現に、海外の宇宙関係者からは高い評価を受けてるのに…


悔しいなー


技術立国って何だったんですかね?

*1:「着陸」と言うか「ぶつけた」だけなら前例あり

*2:「衛星」の呼称に議論もあるが、JAXAが使ってるのでOKでしょう

*3:ハヤブサの前に、他の衛星で同じメーカーの同じ製品が壊れて、危ぶまれてはいたのですが…

*4:ダメージを受けたリチウムイオンバッテリーは、最悪の場合には爆発の危険あり

*5:この件に関しての公式リリースは見当たらない

*6:トラブルが無ければ他の天体への接近ミッションもあり得た?

*7:回収の為には海に落とせない